【生きろ!】映画『風の谷のナウシカ』があまり好きではなかったが、漫画版を読んでずいぶん印象が変わった。【まるでエヴァ】

サブカル
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いまさら? ナウシカの漫画をやっと読んだぞ。
ジブリ映画『風の谷のナウシカ』の原作ですね。ナウシカの漫画は、宮崎駿監督が1980年代から90年代にかけ、アニメ雑誌に連載していました。

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【アニメージュ】漫画『風の谷のナウシカ』について【1982年-1994年連載】

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アニメージュでナウシカの連載が始まった頃、毎月買って楽しみに読んでいた。
リアルタイム世代ですね。

 漫画『風の谷のナウシカ』は1982年から94年まで足かけ13年月刊誌「アニメージュ」に連載された。単行本全7巻の発行部数は1700万部を超える。84年に公開されたアニメーション映画の「原作」とされることが多い漫画版だが、映画とある程度の共通性があるのは単行本第2巻の半ばまで。宮崎駿監督(80)は映画版の完成後も映画「天空の城ラピュタ」「となりのトトロ」「魔女の宅急便」「紅の豚」制作の合間を縫って、漫画版の続きを懸命に描き続けた。

出典:www.asahi.com

だいたい映画と同じところくらいまで読んで、いつの間にかアニメージュも買わなくなり…いずれ最後まで読みたいと思いつつそのままになっていた。1990年代半ばにナウシカの漫画が完結したと風の便りで聞いて、まだ連載が続いていたのかと驚いたことを覚えている。その後、手元に全巻揃えたのだが、読まずに荷物の中に埋もれていた。
連載開始から、約40年ぶりにやっと全巻読んだんですね(苦笑)。
映画と異なる救世主像 宮崎監督の苦悩


 映画ではナウシカたちが暮らす「風の谷」に、トルメキア王国の王女・クシャナ率いる一部隊が侵攻するという「地域紛争」を描いたが、漫画ではトルメキアと、映画には登場しなかった「土鬼(ドルク)」という帝国が、血みどろの大戦争を繰り広げる。「風の谷」はトルメキアと同盟関係にあり、ナウシカもクシャナと共に戦争に赴かざるを得なくなる。「ナウシカとクシャナの対決」だった映画とはまったく異なる構図だ。
 ナウシカは敵味方を問わず、少しでも多くの命を助けようとするが、「風の谷を救った救世主」だった映画とは異なり、大局にはほとんど影響を与えられない。クシャナも、父ヴ王や3人の兄たちから命を狙われ、部下の大半を失ってしまう。
 そんな中、失われたはずの旧文明の技術で土鬼が作った生物兵器「粘菌」が暴走し、世界は滅びへの歩みを速めていく――。
 連載中には東西冷戦の終結、バブル経済の破綻(はたん)など世界と日本の方向を変える出来事が続いた。宮崎さんに特に衝撃を与えたのは、ユーゴスラビアの内戦だったという。長年の争いの末、平和を築き上げたはずだったのに、国際情勢が変化するや、再び民族間での戦闘や虐殺が起きてしまった。
 『ナウシカ』の作中でも「人間の愚かしさはとめる術(すべ)がない」「滅びは必然」などの言葉が繰り返される。ナウシカも「私たちは呪われた種族」と認める一方で、こうも叫ぶ。「私たちの風の神様は生きろといってる」「私生きるの好きよ」「光も空も人も蟲(むし)もわたし大好きだもの」。宮崎さんの苦悩と葛藤が伝わってくるかのようだ。

出典:www.asahi.com

今でこそナウシカもジブリ映画だが、ホントはジブリ誕生のきっかけでもあり端境期の作品だからね。僕の中で宮崎駿はナウシカ以前とナウシカ以後という区切りがある。コナンやカリオストロのナウシカ以前は大好きだが、ナウシカ以後のジブリになってからイマイチなんだよね。といいつつ毎回映画館でみてはいるが。そもそも映画のナウシカがそんなに好きじゃなかった。コナンやカリオストロの方が好き。
そうなんですか?
しかし今回、漫画を読んでちょっと変わったかも。映画『風の谷のナウシカ』はクライマックスの巨神兵のシーンは衝撃を受けたし、好きな部分もあるのだが、ラストが納得できなかったんだよねえ。のちに、宮崎駿もあの宗教的なエンディングを後悔しているようなことを聞いたが、まさに僕も同じ。あれがちょっと興ざめだった。さらにいうと、せっかく松本隆と細野晴臣が作った主題歌、安田成美の歌を劇中で使わないで宮崎駿はイヤな感じ、と思っていた(笑)。しかし、今回の漫画、映画と違う結末に僕は大いに溜飲を下げた。漫画版はいいねえ!
ほー。







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【映画の評価】映画『風の谷のナウシカ』について自己評価「65点」の宮崎駿監督、盟友・高畑勲プロデューサーの評価「30点」にブチギレ?【ロマンアルバム】

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さっきも言ったけど、宮崎駿は映画について満足しているわけではない。自己採点だと60点くらいらしい。
え~と(検索中)…「65点」だそうです。
宮崎監督が自身で付けた映画の採点は65点

新聞のインタビューでは “65点”という厳しい自己採点をしているという事実があります。その大きな理由はラストにあり、「ナウシカが蘇るところ、その場面に今でもこだわっていて、まだ終わった感じがしない」「(自己犠牲で命を投げ打って死んでしまった)ナウシカが王蟲に持ち上げられて朝の光で金色に染まると宗教絵画になっちゃう、あれ以外の方法はなかったのかとずっと考えている」というものであったのだとか。

出典:cinema.ne.jp

宮崎駿自身の映画ナウシカの評価、そしてプロデューサー高畑勲の見解については、僕も鈴木敏夫のラジオ(※東京FM「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」)で聴いたことがある。
高畑勲さんはナウシカでプロデューサーとして宮崎駿監督を支えました。しかしながら作品の評価は、“あえて”低いようです。
プロデューサーを務めた高畑勲の採点は30点

「『風の谷のナウシカ』ロマンアルバム」の中で、プロデューサーを務めた高畑勲監督は以下のような発言をされています。
プロデューサーとしては万々歳なんです。ただ、宮さんの友人としての僕自身の評価は、30点なんです。宮さんの実力からいえば30点。もちろん原作を映画にするという点では、まったく申し分なかったんですが、この映画化をきっかけに宮さんが新しい地点にすすむだろうという期待感からすれば、30点ということなんです。

出典:cinema.ne.jp

映画の絵はキレイだし、1本の作品としてはまとまっているんだけどね。それに巨神兵のシーンみたいなサプライズもあるし。ただなんか物足りなかった。あのカリオストロの、あのコナンの宮崎駿がこんなものか? と。
生意気な中学生ですね。
30点発言を目にした宮崎監督はブチギレ

高畑勲監督の30点発言は上記の「『風の谷のナウシカ』ロマンアルバム」での発言ですが、それを目にした宮崎監督は鈴木プロデューサーを呼び出して叱責。
その本を目の前にしてね、いきなり「なんだ、この本は?」と。「おまえが作ったんだろ?」と。「こんなくだらない本、なんで作ったんだ?」って言うわけですよ。で、理由を言わないんですよ。でも、ぼくは分かってますからね。ああ、“アレ”だな、と思って。
そしたらですね、生涯忘れないですけども、その本を手に取ったんですよ、両手に持って、本をふたつに引きちぎったんです。「すごい力だ!」ってそこで感心するんですよ! だって、あれ出来ないですよ、ぼくあとでやってみたけれど。

出典:cinema.ne.jp

宮崎駿、ロマンアルバムをふたつにちぎったらしいよ(笑)。ま、しかし、その怒りが漫画版を素晴らしい傑作とする原動力になったんだからね。高畑勲も、鈴木敏夫も、宮崎駿を操るの上手だなあ。
宮崎監督、なんかかわいいですね(苦笑)。

舞台は「火の7日間」といわれる最終戦争で現代文明が滅び去った1000年後の地球。風の谷に暮らすナウシカは、「風の谷」に暮らしながら、人々が忌み嫌う巨大な蟲・王蟲(オーム)とも心を通わせ、有害な瘴気覆われ巨大な蟲たちの住む森「腐海」の謎を解き明かそうとしていた。そんなある日、「風の谷」に巨大な輸送機が墜落、ほどなく西方のトルメキア王国の軍隊が侵攻してくる。墜落した輸送機の積荷は、「火の7日間」で世界を焼き尽くしたという最終兵器「巨神兵」であった。そして、少女ナウシカの愛が奇跡を呼ぶ・・・。

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【読んでわかった!】漫画ナウシカと映画ナウシカの大きな違い

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漫画『風の谷のナウシカ』、まず緻密で絵心あふれる宮崎駿の作画だけでお腹いっぱいになる。全体的に大満足だし、ラストも映画に比べてずっとよかった。しかし、難解なラストだから、その意味についてはこれからも考えていくことになるだろう、最近そんな本も出たみたいだし。
え~と(検索中)…こちらですね。

漫画『風の谷のナウシカ』を巡る最大の謎に、18人の識者が挑む! 朝日新聞デジタルで2021年3月から2022年末にかけて配信され、読者から大きな反響を呼んだインタビュー連載「コロナ下で読み解く風の谷のナウシカ」。そのすべてをまとめて単行本化!宮﨑駿監督が足かけ13年の歳月をかけて完成された漫画版『風の谷のナウシカ』は、映画版とはまったく異なる深みと広がりを持ち、読み手にさまざまな「謎」を投げかけてくる。中でも「なぜ、ナウシカは人類の滅亡も辞さず、地球環境の再生を目指していた『生ける人工知能=シュワの墓所』を拒絶したのか」という疑問は、多くの読者の心を捉えて離さない。
時代の先端で活躍する論者たちがこの謎に挑みつつ、コロナウイルス、ウクライナ侵攻、AI問題、気候変動など、混迷する現代社会を切り開く鍵を「ナウシカ」の中に見いだそうと試みる。「ナウシカ」の複雑な物語世界を理解するための人物相関図、用語解説、ブックガイドも収録。
【収録著者】民俗学者・赤坂憲雄/俳優・杏/社会哲学者・稲葉振一郎/現代史家・大木毅/社会学者・大澤真幸/漫画家・大童澄瞳/映像研究家・叶精二/作家・川上弘美/軍事アナリスト・小泉悠/英文学者・河野真太郎/ロシア文学者・佐藤雄亮/漫画研究者・杉本バウエンス・ジェシカ/文筆家・鈴木涼美/スタジオジブリプロデューサー・鈴木敏夫/漫画家・竹宮惠子/生物学者・長沼毅/生物学者・福岡伸一/評論家・宮崎哲弥(五十音順、敬称略)

僕なりに、映画と違うところをいくつかざっくりと紹介しよう。
映画は漫画の約2巻分とのことですから、全7巻の漫画はその3倍から4倍の密度でしょうか?

映画の敵は「トルメキア」でしたが、漫画ではさらに「土鬼(ドルク、土鬼諸侯国連合)」という敵対勢力が登場します。

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漫画で登場する「土鬼(ドルク、土鬼諸侯国連合)」という敵対勢力、その土鬼が操る「ヒドラ」という人造人間が、映画には全く出てこない。
ヒドラ、気味悪いですね…。

映画では「巨神兵」のビジュアルが衝撃的でしたが、漫画で登場する「ヒドラ」という人造人間もかなり印象的です。

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あともちろん、「腐海」や「王蟲(オーム)」も、映画よりさらに緻密に描かれる。そして躍動するナウシカ、苦悩するナウシカ、可憐なナウシカも、存分に堪能することができる。5巻の表紙のナウシカ、好き。
主人公ナウシカさんの魅力が一番じゃないですか?

そして「巨神兵」。ナウシカあってのエヴァンゲリオンだな、とあらためて思った。ナウシカと宮崎駿は相当、庵野秀明のエヴァンゲリオンに影響を与えていることが、漫画を読んで確信できた。ある意味、ナウシカとエヴァって繋がってる。「シン・ナウシカ」もぜんぜんあり得ると思うぞ。
そういうウワサもありますよね。

映画では「巨神兵」のシーンを担当した庵野秀明だが、漫画のナウシカで描かれる世界観もエヴァンゲリオンに大きな影響を与えたと思われる。

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いや、もうこれ、エヴァでしょ。

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月刊「アニメージュ」に連載され、スタジオジブリ長編アニメーション映画「風の谷のナウシカ」の原作となった、コミックス全7巻のセット。宮崎駿監督の水彩画「トルメキア戦役」で彩った美麗な特製箱入り。映像化されたストーリーは、このコミックスのおよそ2巻目まで。映画では語られなかったその後の世界や、ナウシカの活躍を知ることができます。 ‎ 徳間書店 (2003/10/31)

『風の谷のナウシカ』。ささやかな奇跡が産み落とした種子のようなこの作品は、いま、ようやくにして芽生えと育ちの季節を迎えようとしているのかもしれない―。多くの人に愛読されてきた傑作マンガを、二十五年の試行錯誤のすえ一篇の思想の書として徹底的に読み解く。岩波書店 (2019/11/22)

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【最後に】1970年代に植物学者・中尾佐助氏が提唱した「照葉樹林文化論」が宮崎駿『風の谷のナウシカ』に与えた影響

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最後に…今回インターネットでナウシカについて調べていて、ちょっと面白いのを見つけたので紹介しておく。
1970年代に植物学者・中尾佐助氏が提唱した「照葉樹林文化論」ですか。これが宮崎駿監督に影響を与えた?
「照葉樹林文化論」との出会い

 宮崎氏の大きな思想的転換は、七〇年代後半ではなかったか。その転換とは、植物学者・中尾佐助氏が提唱した「照葉樹林文化論」との出会いである。

 太古の地球では、ヒマラヤ山脈の麓から日本に至るまで常緑の照葉樹林(クス・カシ・シイなど)がベルト状に茂っており、各地ではその森に依拠した文化が発生していた。その文化は、衣食住から伝承に至るまで共通が多く、一つの文化圏とも考えられた。照葉樹林地帯は温暖湿潤地帯にしか発生しないため、再生力が非常に強い。このため、人間が破壊をやめれば、数十年でうっそうたる二次林に戻ってしまうのである。国土の狭い先進工業国たる日本に、未だ多くの雑木林が残っているのもこのためである。日本の自然は破壊に寛容であったのだ。

 国境でも民族でもなく、原生植物の性質が人間の文化を決定づけた―とするこの学説は、宮崎氏の思想に涼やかな新風を送り込んだ。宮崎氏は、暗く恐ろしい森や縄文文化に憧れる自身の根源をここに発見したのである。それは、心情左翼として祖国の歴史と政治・経済体制を否定し続け、中央アジアやヨーロッパ諸国に憧れて来た宮崎氏が、初めて「世界に繋がる森の民」として「日本人」を肯定することでもあった。以降、日本の風土と照葉樹林を自作で描くことは宮崎氏の課題となった。

 ところで、独裁者や武器商人など悪人を打倒し、社会を改善すれば事たれり―とする世界観は、所詮数十年レベルの平和を着地点とするものでしかない。しかし、現実の世界はもっと複雑である。人間同士の争いと平和の物語は、数千・数万年単位で続いている森と人類文明の壮大な物語を構成する一つの因子に過ぎないのだ。それは、人間中心主義の視点からは決して見えない、余りにも巨大な物語である。

 宮崎氏のモチーフは、80年代に入ってこうした難解な思想領域に踏み込んで行くことになる。単なる冒険譜と人間解放の物語でなく、自然と人間のつき合いをめぐる問題を抱え込んでいくことになるのだ。その作風は、「照葉樹林文化論」を核とする植物学的・考古学的・民俗学的興味に起因している。よって、宮崎氏を定義の不鮮明な「エコロジスト」とする乱暴な解釈は大間違いである。あえて定義づけるなら、「照葉樹林文化論者」「縄文文化再考主義者」とでも言うべきだが、こうしたタガハメは実に失礼かつ無意味だ。

出典:www.yk.rim.or.jp

これは納得。
さらに続きます。
漫画版「風の谷のナウシカ」―再生と破壊の同居する凶暴な森

 「照葉樹林文化論」の影響を最初に反映させた作品が、一九八二年に連載を開始した漫画「風の谷のナウシカ」である。この作品で宮崎氏のモチーフは大きな変転を遂げた。曰く「自分でも結論の分からない領域に踏み込んだ」のである。

 『ゲド戦記』や『砂の惑星』などに着想を得たこの物語の最大の特徴は、「腐海」と呼ばれる有害な毒を吐く森林を舞台としたことである。文明消滅後に森林が生まれ、生命を再生させるという構想自体は「未来少年コナン」でも描かれた。しかし、森が拡大すればするほど人間が生きられないという、森と人間の対立構造はこの作品で初めて描かれた観点である。一方でこの森は、文明によって生じた毒を浄化し、生態系の再生を司るという「秘密の逆説」をはらんでいる。人間には害悪だが、地球には有益なのだ。

 西欧産のSFファンタジーでは、前述の作品を含めて「文明消滅後に環境が激変して砂漠となった星」が登場するケースが多い。宮崎氏も当初は、砂漠を舞台として構想していたが、どうにも自分の中にある原初的イメージにそぐわず、ついに凶暴な森を舞台とすることを思い着く。それは、実際に砂漠になるまで森を伐り尽くして文明を維持して来たヨーロッパ人の自然観とは異質な、「再生する森の民」たる日本人的な着想であった。宮崎氏にとって、腐海のイメージの原点は、人を寄せつけない生命力に溢れた太古の原生林―つまり照葉樹林ではなかったか。

 作品では、枯渇する資源と少ない領土を支配するための民族紛争、森を焼き払うための最終兵器の争奪、生態系操作などをめぐる多層的で濃密な人間ドラマが展開される。しかし、物語の大テーマはその外側にある。つまり、自然=腐海とそこに棲む動植物と人間がどのように共生すべきかという大問題である。主人公ナウシカが、最も心寄せる存在は森の主たる「王蟲」と呼ばれる巨大な怪物的虫であり、人間ではない。彼女は、人間が環境と生態系の一因子と知るがゆえに、生命操作や戦争に展望を見い出す傲慢で近視的な人間を戒め、しかし絶望して森に逃避することなく、森と人間の中間に立ち、悩み苦しみながら共生の道を模索する。以降、繰り返される自然と人間をめぐる深刻なモチーフはここに端を発している。

 ところで、宮崎氏は、「『ナウシカ』は本来アニメーション用に構想された作品ではない」という主旨の発言を何度か行っている。その意味は、短時間の映画では語り尽くせない複雑な世界観だけでなく、「商業アニメーションでは植物の生態系を描けない」という限界性を痛感していたためと思われる。分業と効率重視の商業アニメーションの世界で、植物の生態系を描き分けることなど手間も技術も論外であった。凡百の商業作品では草木は緑の記号として扱われる。

 「個人作業の漫画という媒体でなら、着色の手間のない分自由な描き込みで何とかカヴァー出来るかも知れない」宮崎氏は漫画連載に際して、そう思ったのではないか。逆に言えば、漫画だからこそアニメーションで避け続けて来た「森と人間の物語」を語れると考えたのではないか。

 つまり、「ナウシカ」映画化の決断は、アニメーションの限界に真っ向から挑戦することを意味するものであった。果たして、映画版はスタッフ力量の限界まで植物描写と向き合うことを余儀なくされた。そして、この「植物を緻密に描く」という制作姿勢は、以降のジブリ作品の大きな特色となったのである。

出典:www.yk.rim.or.jp

野生時代のものとは全く違った存在となってしまった今日のムギやイネは、私たちの祖先の手で何千年もかかって改良に改良を重ねられてきた。イネをはじめ、ムギ、イモ、バナナ、雑穀、マメ、茶など人間生活と切り離すことのできない栽培植物の起源を追求して、アジアの奥地やヒマラヤ地域、南太平洋の全域を探査した貴重な記録。※現在入手しやすい植物学者・中尾佐助氏の著書はこちら。

漫画ナウシカをもっと早く読めばよかった、とは思わないよ。出会うタイミングってあるからね。さて、これでこの夏に公開されるという宮崎駿の最新作『君たちはどう生きるか』がまた楽しみになってきたぞ。
宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』は今年2023年に劇場公開されますが、まだ詳細は不明です。楽しみですね!

雑誌『アニメージュ』に1982年2月号から13年にわたり掲載された、宮崎駿監督のオリジナルコミックス「風の谷のナウシカ」。アニメージュコミックス・ワイド判としてコミックス化された全7巻(B5判)を、全2巻として豪華装幀本化した愛蔵版のセット。 本のサイズもA4判と大きく、雑誌掲載時の原稿を原寸で再現。上質な本文用紙を使い、みっちりと描き込まれた宮崎監督の絵の細部まで堪能できる豪華本です。 【上巻560ページ/下巻544ページ】

超ロングセラー90万部突破! (2022年現在)。「この民話のアニメーション化が夢だった」スタジオジブリ宮崎駿監督が描きおろしたオールカラー水彩の絵物語!チベットの民話「犬になった王子」をもとにした谷あいの貧しい小国の後継者シュナの物語。絵物語という形式で自らの夢を形にした、宮崎駿監督のもう一つの世界。1983年以来のロングセラー。映画「もののけ姫」に出てくるヤックルも活躍!

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