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【マンガ読了】近藤ようこ『 五色(ごしき)の舟』
第18回文化庁メディア芸術祭・マンガ部門大賞! 津原泰水の傑作幻想譚を、近藤ようこが鮮烈に漫画化!
先の見えない戦時にありながら、見世物小屋の一座として糊口をしのぐ、異形の者たちの家族がいた。未来を言い当てるという怪物「くだん」を一座に加えようとする家族を待つ運命とは――。第18回文化庁メディア芸術祭・マンガ部門大賞を受賞! 津原泰水の傑作幻想短編を、近藤ようこが奇跡の漫画化。2014年度、各マンガランキングでも高評価! 出版社 : KADOKAWA/エンターブレイン (2014/3/24)
概要・あらすじ
太平洋戦争末期、家族のように暮らす見世物小屋一座がいた。脱疽で両足を失った元花形役者雪之助はお父さんと呼ばれ、一座の中心となり、両腕のない少年和郎、身体は大きくならないが怪力の昭助、結合双生児の片割れ桜を演者として育ててきた。未来を言い当てる怪物くだんと出会った彼らは、その不思議な力によって、異なる未来へと運ばれていく。和郎 (カズオ)
生まれつき両腕がなく、耳も聞こえないため、川原に捨てられた。そこで雪之助たちに拾われ、見物小屋一座の一員となった。足を器用に使って美しい絵を描くことができる。耳が聞こえないため話す事ができないが、テレパシーのような能力を持ち、人の言葉を解すことができる。桜とは常に心の中で会話している。雪之助 (ユキノスケ)
元旅芝居の花形役者で女形。両足を脱疽で失っている。昭助、桜、和郎、清子を演者とする見世物小屋一座の主催者。一座を家族と考え、皆に自分のことを「お父さん」と呼ばせている。未来を予言するくだんの存在を知り、一座に加えようとする。桜 (サクラ)
結合双生児として誕生した美少女。双子のひとりが亡くなり危篤となったが、雪の助にもらい受けられ、分離手術を受けた。結合双生児だった頃の影響で身体が少し斜めに傾いている。見世物小屋一座では「蛇女」として蛙を飲むなどの芸を見せている。身体には和郎の手による鱗が描かれており、別料金を支払った客には、和郎とのまぐわいを見せることもある。 最初は話すことができなかったが、本人が必要を感じたことで、徐々に話せるようになっていった。心で和郎と会話することができる。くだん
岩国で生まれた異形の生物。牛の身体に人間の顔を持っている。人と牛のあいのこで予言をすると言われているが、くだん自身は自分の事を「別の未来へ導く装置」であると語っている。死ぬ間際に見世物小屋一座の家族全員が幸せに暮らせる未来の世界へ、和郎と清子を導く。
見世物小屋一座の五人。
出典:『 五色の舟』近藤ようこ
見世物小屋の禍々しい世界・・・。
出典:『 五色の舟』近藤ようこ
未来を言い当てるという怪物「くだん」とは?
件(くだん)は、19世紀前半ごろから日本各地で知られる妖怪。「件」(=人+牛)の文字通り、半人半牛の姿をした妖怪として知られている。
その姿は、古くは牛の体と人間の顔の怪物であるとするが、第二次世界大戦ごろから人間の体と牛の頭部を持つとする都市伝説も現れた。
幕末頃に最も広まった伝承では、牛から生まれ、人間の言葉を話すとされている。生まれて数日で死ぬが、その間に作物の豊凶や流行病、旱魃、戦争など重大なことに関して様々な予言をし、それは間違いなく起こる、とされている。また、件の絵姿は厄除招福の護符になると言う。
別の伝承では、必ず当たる予言をするが予言してたちどころに死ぬ、とする話もある。また歴史に残る大凶事の前兆として生まれ、数々の予言をし、凶事が終われば死ぬ、とする説もある。
江戸時代から昭和まで、西日本を中心に日本各地で様々な目撃談がある。
一座のお父さんこと雪之助は、「くだん」を一座に加えようと画策する。
出典:『 五色の舟』近藤ようこ
「くだん」に平行する世界へと導かれるふたり。
出典:『 五色の舟』近藤ようこ
【高橋留美子の同級生?】近藤ようこさんのマンガをもっと読みたい!
出典:twitter.com
近藤 ようこ(こんどう ようこ、1957年5月11日 – )は、日本の漫画家。
新潟県新潟市出身。新潟県立新潟中央高等学校時代、高橋留美子らと共に漫画研究会を設立し活動、近藤は副部長を務めていた。折口民俗学にあこがれて國學院大學文学部文学科に進学。大学在学中に『ガロ』1979年5月号にて投稿作品「ものろおぐ」でデビューし、大学卒業後は書店勤務の傍ら『劇画アリス』『漫画ダイナミックス』『マンガ奇想天外』『漫金超』などに作品を発表する。
初期の作品は青年期の自意識を反映した私小説風のものが多かったが、やがて民俗学・国文学の素養を足場にして構想豊かな作品を手がけるようになる[3]。『漫画サンデー』連載の『見晴らしガ丘』シリーズでは、東京近郊の私鉄沿いにある架空の新興住宅地を舞台に、それぞれ境遇の異なる人物のさまざまな日常ドラマを描いて高い評価を得た。同作で1986年、第15回日本漫画家協会賞優秀賞を受賞。『ビッグコミック』連載の『ルームメイツ』『兄帰る』は1996年、2009年にそれぞれテレビドラマ化、『アカシアの道』は2001年に松岡錠司監督により映画化されている。
平凡な人々のドラマを独自の視点で描いた作品のほか、『水鏡綺譚』『逢魔が橋』、説教節を素材にした『妖霊星(よろぼし)』『小栗判官』など、中世日本を舞台にした一連の作品がある。2007年には坂口安吾の説話体小説「夜長姫と耳男」を漫画化、続いて2008年に同作者の「桜の森の満開の下」を漫画化し、2012年には安吾の「戦争と一人の女」の漫画化を6年がかりで描き下ろした。2013年より『コミックビーム』にて手がけた津原泰水原作の漫画『五色の舟』は第18回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞を受賞している。また、2015年に折口信夫の長編小説『死者の書』を漫画化し発表する。
時は八世紀半ば、平城京の都が栄えた頃。いずれ氏神に仕える者として、館の奥深くで育てられた藤原南家の娘――郎女は、ある年の春分の日の夕暮れ、荘厳な俤びとを、二上山の峰の間に見て、千部写経を発願する。一年後、千部を書き終えた郎女は、館から姿を消し、ひとり西へ向かう。郎女がたどり着いたのは、二上山のふもと、女人禁制の万法蔵院。結界破りの罪を贖うため、寺の庵に入れられた郎女は、そこで語り部の姥から、五十年前に謀反の罪で斬首された滋賀津彦と耳面刀自の話を聞かされるのだが――。第18回文化庁メディア芸術祭[マンガ部門]大賞「『五色の舟』(原作:津原泰水)」 受賞後第一作! 日本民俗学を築いた折口信夫の傑作小説を、初読四十年にしてついに漫画化。古代へと誘う魂の物語。KADOKAWA (2015/8/24)
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【「五色の舟」全文公開に際して】
すこしのあいだ、ほんの暫くのあいだだけ、SARS-CoV-2が誕生しなかった世界を想像してみてください、「新型コロナウイルス」という不穏な響きに無縁で生きていられた世界を、反対派にぶつくさ云われならも東京オリンピック・パラリンピックの準備が荒々しく進み、テレビは選手たちに意気込みを語らせて彼らの及第点を引き上げ、子供達は新しい教室に慣れを感じはじめる一方で連休の予定に胸を躍らせ、お洒落な人々は初夏を先取りした装いでコンサートや芝居に出掛けて風邪をひいている世界を。
そちら側のあなたにとって、治療法が確立されていない疫病が蔓延して連日数多くの人命が奪われ、悲嘆と閉塞感、対策を巡っての口論や罵倒に充ち満ちているこちら側は、失笑が洩れてしまうほど空想的で、野蛮で、もどかしく、でもすこしのあいだ、ほんの暫くのあいだだけなら覗いてみたい世界かもしれません。元の世界に戻れるあてもなく、だらだらと身を置きたいとは思わないでしょうけれど。
もし朝、目覚めたとき、自分がそういう世界の住人だったら――と「むこう側」のあなたはもうひとりの自分を想像し、しかし程なくしてみずからにこう宣言するでしょう――出来ることは限られるかもしれないが、少なくとも、人々への無償の愛と凛々たる勇気を胸に、世界の残酷さに挑み返してやる、断じて負けるものか、後退るものか、と。
誰しもがSARS-CoV-2なき世界に暮らしていた頃、僕はひとつの小説を書きました。その頃から見ても遥かに昔の出来事を、空想して描いた作品です。あるべきだった世界の姿と実際に訪れた世界の姿が、凄まじい速度で乖離していく今、僕はその空想を、改めてたくさんの方に読んでいただきたくなりました。自分の希望というよりも、果たさねばならない義理を思い出したような感覚でした。矢も楯もたまらずその日のうちに出版権を委ねている河出書房新社に相談を持ちかけましたところ、幸いにして無償公開へのご快諾を賜ることが出来ました。
残酷で退屈な「こちら側」でのご退屈しのぎが、いまそこに居られるはずだった「むこう側」のあなた、そしてその思い描くところの凛々しい「こちら側」のあなたへと、輝かしい反射を重ねてくれますならば、かつての僕はこの小説をものした甲斐がありました。2020年4月28日
津原泰水
百年に一度生まれ、未来を予言するといわれる生き物「くだん」。鬼の面をした怪物が「異形の家族」に見せた世界の真実とは(「五色の舟」)―各メディアでジャンルを超えた絶賛を受け、各種ランキングを席巻した至極の作品集がついに文庫化!津原泰水最高傑作短篇との呼び声が高い「五色の舟」を始め、垂涎の11篇を収録。文庫版オリジナル、著者による自作解題も併録。 河出書房新社 (2014/4/8)