【全16巻読了】小山ゆう『雄飛』はボクシング漫画でも『がんばれ元気』とはちょっと違う

サブカル
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全16巻読了。小山ゆう『雄飛』は、ただのボクシングマンガじゃなかったよ。
ただのボクシングマンガじゃない?
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【インタビュー】作者・小山ゆう、『雄飛』を語る

出典:www.bubkaweb.com

ところで・・・作者・小山ゆうも『雄飛』という作品を相当気にいっているらしいぞ。
そうなんですか?

※吉田豪氏のインタビュー記事より引用
――最近の作品だと『スペリオール』連載のボクシング漫画『雄飛』が大好きでした!
小山 自分でも相当好きなんですよ。雑誌でも人気あったんだけど、単行本の売れ行きがあんまりよくなかったんですよね、なぜか。

――無茶苦茶いい作品ですよ!
小山 なんとなくわかるけどね、なぜ単行本が売れなかったか。やっぱりスッキリさせる回が少なくて。一気に読めばスッキリするんだけど、なんかこうずっと抑えて抑えて。

――最後に巨悪を倒してスッキリさせる。
小山 同じ復讐ものでも、たとえば『子連れ狼』は誰かを斬ればスッキリするじゃん。『あずみ』もいろいろやられてもあずみが斬ればスッキリするんですよ。人に言われたことがあるんです、「早くスッキリさせてくれよ!」って。そういうことかなと思ってね。

――適当に中ボスとか倒したりしながらこまめにスッキリさせないといけないんですね。
小山 そういうことなんだろうね。でも、個人的にはすごい好きな作品なんですよ。

――無茶苦茶いいですよ! それに、あんなに悪役らしい悪役ってまずいないですよ!
小山 ハハハハハハ! 峻堂(巌、主人公・大垣雄飛の姉と母を絞め殺した、とことん悪いヤクザ)いいよねえ。実写で役者にすごい特殊メイクでやってほしいんですけど。

――顔も悪いし人間も悪いし、あんなにわかりやすい悪って最近のエンターテインメント作品でまずないなと思って。最近、悪には事情があるものとか、正義も悪も一概には言えないみたいになっている世の中で、こんなに明確な悪が存在するのがすごいよなって。
小山 ハハハハハハ! そうですか(笑)。

出典:www.bubkaweb.com

作者も気に入っている作品なのに、単行本が売れなかったとは・・・(苦笑)。
人気作家ですし、それなりには売れてますよね。『あずみ』ほどは売れなかったということでしょうね。

漫画のマエストロの偉業に迫る永久保存版! (2019/10/30 刊)

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【あらすじ】小山ゆう『雄飛』全16巻

※ネタバレあり

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小山ゆうの代表作『がんばれ元気』は、『あしたのジョー』に比肩し得る名作ボクシング漫画だと思う。小山ゆうにとって、『がんばれ元気(1976年連載開始)』以来、『雄飛(2014年連載開始)』は久しぶりのボクシングものだね。
こちら、『雄飛』連載当時の紹介記事を引用します。

※「このマンガがすごい!WEB」より
いずれも長期連載となった『あずみ』と続編『AZUMI -あずみ-』を完結させた、巨匠・小山ゆう注目の最新作は、敗戦後の日本を舞台とした愛と復讐の人間ドラマ。

昭和20年、雄飛は満州から引き揚げる途中で、母と姉をある男に殺されてしまった。親戚の家に預けられるも、居候の身とはいえあまりに過酷な仕打ちを受けて逃走。
畑の野菜を盗んで食べ、「ひとりでも生き抜いてやる」と強いまなざしを持ち続けるのは、母と姉を殺した男をいつか見つけ出し仇を討つためだ。

いじめられていた少年を助けたことをきっかけに、心やさしい娼婦・まち子に拾われた8歳の雄飛。のちに後ろ盾を得て、17歳でプロボクサーとなりデビュー戦に勝利する。
1巻では、様々な年齢の雄飛が断片的に描かれているが、その間の詳しい事情は明かされていないところも多い。また、満州引き揚げ時、雄飛が5歳のときに出会っていた――のちに女優となる青葉との運命的な再会も暗示されている。

新たな名作の幕開けは仕掛けがいっぱい。高度成長期、激動の時代を背景に濃厚きわまりない物語を味わえそうだ!

出典:konomanga.jp

もう一気に全部読んだよ。しかし、『がんばれ元気』と違い、『雄飛』はただのボクシングマンガではない。そこには、戦争の爪痕そして復讐劇がある。ウィキペディアより、主人公の「大垣雄飛 / 柴田雄飛」の紹介部分を読めば、あらすじがほぼわかるので引用する。ネタバレあり、ご注意。
こちらです。
大垣雄飛 / 柴田雄飛

主人公。出生時の名前は「柴田雄飛」であったが、1945年(昭和20年)8月にソ連軍満州侵攻の混乱の際、母親と姉が日本人男性に絞殺され、父親はソ連軍の収容所で亡くなる。その後、親戚に預けられるものの、家出して野宿生活を送り、奥野まち子の扶養を受けるが、「大垣の親分」の養子となって名前を「大垣雄飛」と改め、高校進学後、プロボクサーとしてデビューする。

頭脳は明晰で判断力も卓越しており、ボクサーとしてのみならず企業経営者としてのセンスにも優れ、若いながらも部下や取引先からの信頼も厚く、着実に社会的地歩を築きつつある。

実の家族のみならず育ての親でもある大垣の親分の仇として峻堂巌への復讐を誓っており、高森由美と一時の別離を余儀なくされてからは、闘争を本格化させ、合法的なあらゆる手管を駆使して峻堂の事業を突き崩し、決定的な衰退へ追い込んだ。

高校卒業をきっかけに正式な侠客として歩み始めるが、恋人の高森由美や恩人の奥野まち子を救ってくれた大恩人の水川烈をなすすべもなく暗殺されたことをきっかけに、峻堂の死に物狂いの反撃への備えを徹底するためにも、侠客としての片手間でボクサーをやる余裕は無いと密かに引退を決意し、その最後の試合相手に北原慎一を選び、名勝負を繰り広げて有終の美を飾ると、峻堂との対決に全力投球に入るが、峻堂の放った殺し屋集団によって幾人もの仲間を暗殺され、その恐怖と焦燥の中、幼馴染みの青葉と恋愛感情が芽生え始める。

女殺し屋の馬小燕殺害事件を引き起こして国外逃亡を余儀なくされた峻堂を一気に追い詰め、母と姉の仇として糾弾し、逮捕へと追い込むことに成功する。

出典:ja.wikipedia.org

『がんばれ元気』と比較すると・・・壮絶な過去があるにせよ、主人公は優等生タイプの好青年というところは元気と同じ。同級生のヒロイン、年上のヒロインが出てくる展開も似ている。しかし、ライバルというか最大の敵が、『雄飛』の場合はボクサーではなく、自分の母と姉を殺した稀に見る大悪党・峻堂巌というところが大きく違う。だから、『雄飛』のクライマックスはボクシングの試合じゃなくて、抗争の決着だもんね。それに、すべてが憎々しい悪の権化・峻堂巌と、敵ながらどこか高潔でどこか人間的なボクサー・関拳児(がんばれ元気の敵役)とでは、まったく違う。
なるほど。
『雄飛』の最大のポイントは、この「峻堂巌」という悪の存在ではなかろうか?
『雄飛』は、悪役が印象に残る作品みたいですね。
















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【感想】巨悪「峻堂巌」の存在があまりにも強烈で・・・

出典:小山ゆう『雄飛』より

なんかさあ・・・戦中・戦後、昔の日本には、こういう悪い男が、たぶん現実にもいたんだろうなあと、そういう印象が強く残った。
ウィキペディアより、峻堂巌について引用します。
峻堂巌

大垣雄飛の姉と母を絞殺した犯人(顔の傷はその時、雄飛に斬りつけられてついたものと同じであり、同一人物の証拠とされた)。戦後社会に極道として登場する。

自己の欲望と権益拡大のためなら脅迫や陵辱も行い、拷問の上、殺人さえする。大戦時に中国大陸で従軍していたころから、戦火のどさくさにまぎれて国籍や人種の区別なく略奪や陵辱を繰り返してきた山賊にも等しい人物で、戦後の平和な日本社会でも関わる人間を破滅させることが多いため周辺に黒い噂が絶えず、警察関係者から大量殺人者の嫌疑を受けつつある。

大垣組関係者を拉致し、拷問にかけた時、半ば無意識の内に吐き出された言葉から大垣雄飛こそ自分にとっての不倶戴天の敵であることを知ると根深い憎悪を抱き、雄飛の恋人・高森由美に狙いを定めて誘拐するが、度重なる非道な行いに愛想をつかしていた部下の水川烈の怒りを買ってしまい、由美を逃がしてしまう。

その結果、脅しをかけようとした雄飛に徹底的な抗争を決意させるはめとなり、その畳み掛けるような策の数々によって頼みとなる人材を奪われると同時に活動拠点の廃業を強いられて、主力となる事業を切り崩されて追い詰められてしまい、側近と共に中国へ逃亡する。

後に戦争中の伝を頼って4人の暗殺者を雇い入れて帰国し、大垣組組員達の抹殺を進めていったが、部下達を次々と殺されても不敵な態度で挑発してくる雄飛に対し憎悪を押さえ切れなくなる。自分の命令を拒絶した女殺し屋の馬小燕を絞殺し、警察の監視下で殺人を犯した危機的状況に気付いて大慌てで日本国外への脱出しようとするが、船に乗る寸前に青葉の車に跳ね飛ばされ雄飛に叩きのめされた時に、かつて家族の仇討ちに自分の顔を切り裂いた少年が雄飛であることを知らされる。警察に逮捕された後は死刑が確定する。

出典:ja.wikipedia.org

もう、こんな悪い奴いないからね。ホント最悪。
「自己の欲望と権益拡大のためなら脅迫や陵辱も行い、拷問の上、殺人さえする。」とあります・・・。
物語は最後に悪が負け、ハッピーエンドで終わりはするんだけど、それでもこの強烈な男の印象が、読後残っちゃってねえ・・・。
ちょっとイヤですね(笑)。
この男が最後に、拘置所だか刑務所で発狂するシーンとか、なんとも恐ろしい。最初のインタビューにもあったが、見る角度でどちらが正義でどちらが悪か一概には言えないというドラマも多いし、現実もそうだが、この『雄飛』の峻堂はあきらかに悪。圧倒的にこいつが悪い(笑)。
絶対に近寄りたくないです・・・。
マンガとはいえ、小山ゆうの職人技で、リアルにそのいやらしさが読後も残る。『雄飛』はそんな作品だと思うよ。怖いモノみたさで、実写映画化を強く望む。誰が峻堂巌役に選ばれるか超楽しみ。その人選できっと映画の良し悪しが決まるな。ぜひ映画化を! 意外と、大沢たかおなんかが物凄いメイクしたら似合うかも?
大沢たかおさんですか(苦笑)。
でも、あらためて、今の日本はそれなりに平和で良かったなあ。
ですよね。
いや・・・意外と今の世の中にも、羊の皮の下に峻堂みたいな本性を持つ人間もいるかも? 
それもかえって怖そうです・・・。

小山ゆうの最新作はこちら!(2019/9/30 刊)