1960年代以降、手塚治虫が少年誌・青年誌・大人誌に連載した長編(中編)マンガを順不同でこれから全部読んでいきたい。
今回は1969年から、「サンケイ新聞」に連載された「海のトリトン」です。
名前:くま(♂)
プロフィール:酔っ払いおじさん、広く浅く世間を語る
特技:リフティング50回
名前:カエル(♂)
プロフィール:ゆとり世代(さとり世代)、独身、潔癖症
特技:インターネット超高速検索
【手塚治虫全部読む10】アニメと違う「海のトリトン」の結末を知っているか?【1969年サンケイ新聞】

出典:tezukaosamu.net
1969年、世界ではアポロ11号が月面着陸に成功、ウッドストックフェスが開催され、ヒッピー文化が流行、ベトナム戦争反対運動も拡大していった。日本では東大安田講堂事件が起き、全共闘運動が終息へと向かう。そんな時代。
出典:grok
そんな時代に、「海のトリトン(1969/09/01-1971/12/31)」は1969年から71年にかけ、「サンケイ新聞」で連載された作品です。
まず最初に…「海のトリトン」に関しては、アニメ版がガンダムで有名な富野喜幸(富野由悠季)監督の初監督作品ということもあって、今となっては、手塚作品というより富野作品として語られることが多く、手塚のマンガ版の評価が必要以上に低くなっているのが気になっていた。
原作漫画は、手塚治虫によって『サンケイ新聞』(現・『産経新聞』)に1969年9月1日から1971年12月31日まで新聞漫画『青いトリトン』と題して連載された。
(中略)
当時はスポ根劇画が人気を博しており、『サンケイ新聞』側の希望で特訓などの要素が取り入れられた。当初、海棲人類トリトン族の赤ん坊「トリトン」を拾ってしまった漁村の少年「矢崎和也」を主人公とし、抗争に巻き込まれた第三者の冒険と根性のストーリーになるはずだったが、作者自身が純然たる冒険活劇とした方が作品として面白くなることに気づき、物語中途で和也を失踪させ、主人公をトリトンに交代させた。「トリトン」やその敵である「ポセイドン」などギリシア神話から名称を拝借しているものの、内容そのものはギリシア神話とは直接的な関連はない別個の創作作品となっている。
その後、1972年4月から9月末まで『海のトリトン』と題してテレビアニメが放送された。アニメが放送終了した1972年末に初めて単行本化されたときに原作の漫画も同じ題に改められた。
海の民トリトン族のたったふたりだけの生き残りである少年トリトンと人魚の少女ピピが、トリトン族を滅ぼして海の覇権をにぎろうとするポセイドン族と戦うというストーリーの骨子は、漫画版もアニメ版も同じだが、原作者の手塚治虫が単行本の折り返しにて「テレビまんがのほうは、ぼくがつくったものではありません」と書いているとおり、内容、カラーはかなり異なる。漫画版のほうは、トリトンが人間に拾われ、陸の人間として成長する部分のほか、人間とのいろいろな交流、海洋汚染や人間の欲などとの対立などがストーリーのもう一本の柱になっており、展開も陸に海にと紆余曲折が多く、トリトンの姿も父になるまで何段階か成長変化するが、アニメ版のほうは13歳の少年のままで、舞台はほぼ海、海辺に限られ、基本的には1話完結、全体は低年齢視聴者層を意識したシンプルなものになっている。ただしアニメ最終回に語られたトリトン族とポセイドン族の確執の真相は低年齢層向きとは言い難く、長く議論の的、語り草となった。
出典:ja.wikipedia.org
どっちかというと、アニメの方が全体的に子ども向けだけど、富野監督が子どもにも容赦なく、トラウマ級の最終回を作ったことで、逆にインパクトが強くなっている。しかし、全体を通してみると、マンガ版の方が、他の手塚の名作同様、人間社会・世相への独自の切り口で大人も楽しませてくれる内容になっているんじゃないかな?
しかし子どもの頃、アニメは観ていて大好きだったけど、マンガの方が何度か手に取ったものの、なんとなく1巻くらいしか読んでなくて、ちゃんと最後まで読んだのは今回が初めてだった。マンガの結末ってこうだったんだね。いやいや、マンガはマンガで印象的なクライマックスではないか!
他の作品もそうだけど、手塚マンガは最初からきっちり脚本が考えられているというより、行き当たりばったりで自由自在、キャラクターにひっぱられてストーリーが展開するんだよね。まあ、手塚マンガに限らず、それがマンガの醍醐味ではあるが。マンガ「海のトリトン」も、自由自在な手塚の天才的なストーリー展開が冴える作品となっている。
※この時、手塚マンガは「行き当たりばったり」と思い込んで喋っていますが、実は手塚治虫が最初からストーリーや結末をかなり決めてマンガを作っていることを後ほど知ることになります。それについては以下の投稿を参照してください。ただトリトンに関しては最初の構想から、展開が離れていったのも事実みたいですね。
関連エントリー→【手塚治虫全部読む11】悪とは何か?転機となった傑作「バンパイヤ」第1部、しかし第2部未完に【1966年週刊少年サンデー】
ただ、最近の素人は、ストーリーが破綻してるとか、伏線回収してないとか、きっちりかっちりした脚本じゃないと許さない風潮あるから、つまらんよね(笑)。手塚みたいな天才をもっと理解して欲しいな。マンガは勢い、ドライブ感が大事。物語の整合性など、後で映画化ドラマ化する時に秀才が考えればいいのだ。天才は自由にやってよし。
なんか昨今も話題となった、原作と映像化の問題みたいになってきましたね(苦笑)。
サンケイ新聞に、長い間「鉄腕アトム」を掲載したあと(編注:「アトム今昔物語」のこと)、編集部との話し合いで、”海を舞台にした熱血もの”をかくことにきめたときは、まだ、こんなSFふうのロマンにするつもりはありませんでした。
当時は「巨人の星」や劇画が全盛の頃で、新しい連載漫画も、それらの熱血・スポコン的なアクションを、なるべく強くいれてほしいという要望がありました。ぼくは、どうもそういうムードのものは苦手なのです。それでも、「海のトリトン」のはじめのほうに丹下老人なんていう硬骨漢を登場させたり、シゴキをやらせたりしたのは、そういう要望をいれてのサービスです。
しかし、かいていくうちに、物語は、はじめの構想からどんどんはなれて、SF伝奇ものの形にかわっていきました。よく、主人公が作者のおもわくどおりに動かず、かってに活躍をはじめることがあるといわれますが、トリトンの場合もそのとおりで、あれよあれよと思っているうちに、ポセイドン一族やルカーやゴーブができていってしまったのです。
(講談社刊 手塚治虫漫画全集『海のトリトン』4巻 あとがきより抜粋)
出典:tezukaosamu.net
【奇跡!】手塚治虫と富野由悠季と西崎義展という三巨神がすれ違ったアニメ、それが「海のトリトン」である!

出典:Amazon
マンガの神様・手塚治虫に、アニメ界の異端プロデューサー・宇宙戦艦ヤマトの西崎義展、そして今なお新作が新しいファンを獲得し続けるガンダムの富野由悠季という…日本のマンガ・アニメの流れを大きく変えた三人が奇跡的にクロスした交差点がアニメ「海のトリトン」である。
それまで子どものものだったアニメが若者や大人をも魅了していく過程で、まずは敏感な女子中高生の熱狂的なファンを生み出したのもトリトンが最初だと言われる。まさに、今の日本のポップカルチャー、今の世界的なアニメブームの出発点となった作品かもしれない。
【最終回のトラウマ】富野由悠季、伝説のはじまり

出典:tezukaosamu.net
あちこちで散々語られてるから詳しく説明しないけど…アニメトリトン最終回の衝撃。
正義と思って戦っていた主人公が実は…というやつですね。
子ども相手にも容赦しないというやつですね(苦笑)。
【むしろこっちがトラウマ?】クラゲ「トリトンみつけた」「トリトンみつけた」

出典:nobit2017.blog.fc2.com
しかし、トリトンの最終回がトラウマって言われるけど、僕的にはクラゲの方がトラウマだよ(笑)。
あれが子ども心に怖かったよねえ。広大な海の片隅から、微か声で静かに広がっていく悪意みたいな…なにか生理的に恐怖を感じたと思う。
【怖い】異形の海の怪物たち
出典:Amazon
あと、敵が怖かった。海で泳ぐの怖くなったもん(笑)。
ポセイドンとその手下たち

出典:bhd.viewing.ru.com
【月刊ムーへ誘い】オリハルコンの剣、アトランティス大陸への憧憬

出典:Amazon
「オリハルコンの剣」はアニメだけの設定らしいですね。
オリハルコンとか、アトランティスとか、そういうキーワードへの憧れが、このあと月刊ムーを毎月買うようになる動機づけになったと思う。そっち方向へ多くの子どもたちを誘ったのも「海のトリトン」の功績と言えよう。功績?(笑)
「ムー」は1979年10月、図鑑や辞典などで知られる学習研究社(現・学研ホールディングス)から、中高生向け雑誌として創刊されました。
出典:www.asahi.com
【音楽のインパクト】昭和アニメを代表する主題歌、音楽にはジャズミュージシャンを起用
海のトリトン
トリトンをトリトンたらしめたのは、この主題歌だよね。
で、今回マンガを読んだあと、あらためてアニメの最終回だけ見たんだけど、トリトンの音楽も独特だよね。音楽を担当した鈴木宏昌さんってジャズやってる人みたい。
え~と(検索中)…鈴木宏昌さんは、ジョージ川口さんや日野皓正さんとも活動したジャズ・ピアニストみたいですね。昭和の歌謡曲で数多くヒット曲の編曲も手掛けられていたようです。
出典:ja.wikipedia.org
今回あらためて最終回をみて、海底に眠るアトランティスの遺跡をバックに流れる曲なんて、ルパン三世カリオストロの城を思い出したもんね。ルパンの音楽、大野雄二もジャズ・ピアニストだし、なんか共通な雰囲気を感じた。
あと、エンディングテーマを、南こうせつさんらかぐや姫が担当していたことも有名です。
「海のトリトン」はちゃんとみんなに評価されてると思うけど、マンガもアニメもそれぞれにもっと評価されてもいいな。とにかくマンガの方が若干評価低いように感じるので、みんな読むべし。クライマックス知らないだろ?
アニメとはまた違った…なかなか感動的なラストが待っているようです。
トリトン

出典:bhd.viewing.ru.com
ピピ子

出典:bhd.viewing.ru.com
ルカー

出典:bhd.viewing.ru.com
メドン(マンガではガノモス)

出典:bhd.viewing.ru.com
コメント