【自己批判?】「恥を知りなさい」とその女は言った。~村上春樹の短編『一人称単数』【読了】

サブカル
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まさかの「恥を知りなさい」きたぞ(笑)。
え?
名前:くま(♂)
プロフィール:高齢子育て中、飲酒は週末のみ
特技:奥さんをフォローすること(嘘)
名前:カエル(♂)
プロフィール:ゆとり世代(さとり世代)、独身、潔癖症
特技:インターネット超高速検索
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【2020年07月18日発売】6年ぶりに放たれる、8作からなる短篇小説集『一人称単数』

6年ぶりに放たれる、8作からなる短篇小説集

「一人称単数」とは世界のひとかけらを切り取る「単眼」のことだ。しかしその切り口が増えていけばいくほど、「単眼」はきりなく絡み合った「複眼」となる。そしてそこでは、私はもう私でなくなり、僕はもう僕でなくなっていく。そして、そう、あなたはもうあなたでなくなっていく。そこで何が起こり、何が起こらなかったのか? 「一人称単数」の世界にようこそ。

収録作
「石のまくらに」「クリーム」「チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ」「ウィズ・ザ・ビートルズ With the Beatles」「『ヤクルト・スワローズ詩集』」「謝肉祭(Carnaval)」「品川猿の告白」(以上、「文學界」に随時発表)「一人称単数」(書き下ろし)

出典:books.bunshun.jp

村上春樹の短編集の話ね。
「恥を知りなさい」というセリフが登場するんですか?
その件はまた後ほど。発売と同時に電子書籍版を購入してたけど、つい最近読了した。なかなかいつもの春樹節を楽しませてもらったぞ。
面白かったんですね。

書名(カナ) イチニンショウタンスウ
ページ数 240ページ
判型・造本・装丁 四六判 上製 上製カバー装
初版奥付日 2020年07月20日
ISBN 978-4-16-391239-4
Cコード 0093

出典:books.bunshun.jp

短篇小説は、ひとつの世界のたくさんの切り口だ。6年ぶりに放たれる、8作からなる短篇小説集。 文藝春秋 (2020/7/18)

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【引用】いつもの村上春樹節を楽しむ

いつものハルキ節は健在ということで、ライター飯田一史氏のコメントを引用させていただく。
■いつものハルキ節は健在

村上春樹のいくつかの特徴的な展開、手法、語りは今回も登場する。
たとえば出会った女性とカジュアルに(インスタントに?)性行為に及ぶ主人公の男性。
付き合っていた女性の自殺。
「中心が複数あり、外延のない円」などと思わせぶりなことを語って消えていく老人。
ドーパミンに駆動されて女性の名前を盗んで我が物にするという猿。
「水辺で3年前に起こったことを忘れたのか?」と女に問われ、蛇の無数にいる街路に紛れ込んでしまう男性。
1955年に死んだはずのチャーリー・パーカーが63年に『チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ』というアルバムを出していたという架空のレビューを書いたのちに、ニューヨークのレコード店で同名のアルバムを見つける、とか、『羊をめぐる冒険』を刊行した年に『ヤクルト・スワローズ詩集』という本を出した、といった偽史(架空の歴史)。
といった具合だ。

出典:news.yahoo.co.jp

どの短編も楽しませてもらったけど、僕は一番最後に掲載されていた書き下ろしの短編「一人称単数」が一番興味深かったなあ。
本のタイトルにも使われているくらいですから、この短編集を代表する短編ということですね。
しかし、Amazonレビューで見つけたけど、これはいかんなあ(笑)。
あらら。

※クラたろう氏のAmazonレビューより引用
「ノルウェーの森」より前からの読者です。

正直、なんだか既視感のある話ばかりに思えました。「中国行きのスローボート」を読んだ時のような深い読後感はありませんでした。

「ウィズ・ザ・ビートルズ」の中に、主人公がパナソニックのトランジスタ・ラジオでビートルズを聞くシーンが出てきます。1965年の事だと書いてありますが、この時代、現在のパナソニック、当時の松下電器は、「パナソニック」ブランドではラジオを販売していませんでした。国内のブランドは「ナショナル」です。

細かい事ですが、作家も、校正した「文學界」も、単行本化した「文藝春秋」も、誰ひとりこんなミスに気づかないなんて。

出典:Amazonのカスタマーレビュー

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【私見】もっとも興味深いのは、書き下ろし短編「一人称単数」

さて、書き下ろし短編「一人称単数」について私見。
この短編が、一番興味深かったんですね。
そもそも「一人称単数」とは、アイ・マイ・ミーってことでしょ。村上春樹の小説ってほとんどこれだよね。
え~と(検索中)・・・ちょっと懐かしい分類表がありました(笑)。

出典:english-club.jp

そんな画像見なくても、誰でもわかるわ(笑)。
くまちゃんがアイ・マイ・ミーとかいうから。
ともかく、村上春樹の小説はほとんど一人称単数だし、今回の短編も一人称単数な訳だけど、「僕が」「私が」という小説はどうしても主観的に都合よく書かれることが多くて、それが私小説の魅力かもしれないけど、多分にツッコミどころも増える。村上春樹の小説も、フェミニストから男性目線するぎるところをずっと非難されてきたよね。都合よく女と出会って、セックスして、その女が死んでとか・・・。
なんかそう端的に言われるとヒドイ小説ですね(苦笑)。
今回もまさに、曖昧な記憶を振り返って、よく覚えていない女たちと思い出が語られる。都合よく。そのうちの何人かとはもちろんセックスもしている。でもついに、最後の短編「一人称単数」では、そんな身勝手な男の記憶の中で都合よく消費されてきた女から復讐されてしまうという(笑)。ちょっとしたホラー短編だぞ。
えええ。
村上春樹が「洒落たかっこうをして、一人でバーのカウンターに座って、ギムレットを飲みながら、寡黙に読書に耽っている」と、見知らぬ女が現れてこういった。「そんなことをしていて、なにか愉しい?」
「村上春樹さんが」じゃなくて、「村上春樹さんの短編小説の主人公が」ですね。
ほとんど本人と同義だろ。
まあ、そうですが。

「あなたのその親しいお友だちは、というかかつて親しかったお友だちは、今ではあなたのことをとても不愉快に思っているし、私も彼女と同じくらいあなたのことを不愉快に思っている。思い当たることはあるはずよ。よくよく考えてごらんなさい。三年前に、どこかの水辺であったことを。そこでご自分がどんなひどいことを、おぞましいことをなさったかを。恥を知りなさい。

出典:『一人称単数』村上春樹

つまりこの短編は、村上春樹による村上春樹の小説の自己批判と言えないだろうか? 実に興味深い。
ほー。
いつもの村上春樹の短編をいくつか楽しんだ後だからこそなおさら、最後に掲載されたこの短編の存在がグサッとくる。実に興味深い。
なるほどですね。
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【2020年流行語大賞候補?】「恥を知りなさい」とその女は言った。

TBS日曜劇場「半沢直樹」の最終回でも、江口のりこ演じる白井亜希子大臣が「恥を知りなさい」と一喝

出典:trend-at-tv.com

そして、「恥を知りなさい」の名セリフだよ。
この話で「恥を知りなさい」というセリフが登場したんですね。
これって去年(2019年)の三原じゅん子氏の発言で話題になったけど、まさかの村上春樹の短編でも登場し、そして先日の半沢直樹の最終回。僕の中では、2020年流行語大賞はこれで決まり(笑)。
大賞はないと思いますが、候補にはなりそうですね(笑)。

2019年6月参院本会議で、野党が安倍晋三前首相の問責決議案を提出した際、三原じゅん子氏が一喝「愚か者の所業、恥を知りなさい!」

出典:trend-at-tv.com

短篇小説は、ひとつの世界のたくさんの切り口だ。6年ぶりに放たれる、8作からなる短篇小説集。 文藝春秋 (2020/7/18)

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