【マンガの定番】「遅刻する食パン少女」の錯覚~「キレンジャーの錯誤」という概念

サブカル
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少女マンガの定番のように思われている「遅刻する食パン少女」、実は少女マンガが隆盛を迎えた1970年代から1980年代にかけて、そういうシーンがそう沢山ある訳ではないらしい。
「遅刻する食パン少女」は少女マンガの定番じゃないんですか?
名前:くま(♂)
プロフィール:高齢子育て中、毎日吞まずにはいられない
特技:奥さんから子どもたちを守ること
名前:カエル(♂)
プロフィール:ゆとり世代(さとり世代)、独身、潔癖症
特技:インターネット超高速検索
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【新潟米PR】遅刻するおむすび少女プロジェクト

ところで、新潟でなんかやってるらしい。一応リツイートしといた。
パンではなく、「遅刻するおむすび少女」ですか?(苦笑)

遅刻するおむすび少女プロジェクトとは?

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【竹熊健太郎氏】「サルまん」の問題のシーン

出典:www.facebook.com

そもそも、この「遅刻する食パン少女」という定番シーンに最初に着目したのは、相原コージと竹熊健太郎によるマンガ『サルでも描けるまんが教室 』。僕も1990年代に楽しませてもらった。
「遅刻する食パン少女」とは…?

大筋は次の通りである。主人公である中高生の少女が朝、学校に遅刻しそうになり、朝食をとる間も惜しんで食パン(トースト)を口に咥えて、家を飛び出す。大慌てで「いっけなーい遅刻遅刻!」と登校路を走っていると、曲がり角で1人の少年に衝突する。2人は互いに悪口を言ったり、謝ったりする。

少女が学校に到着すると、その少年が少女の学級に、転校生として現れ、「たまたま空いていた」という理由で主人公の隣の席に座る事になる。少女は先の衝突のこともあって、当初は少年に悪感情を抱く。しかし紆余曲折の末に、2人はやがて恋に落ちる。

出典:ja.wikipedia.org

あるあるー、ってみんな思ったんだよねー。
これって、よくあるシーンじゃないんですか?
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【少女マンガ】実は少女マンガに「遅刻する食パン少女」はあまり登場していない

出典:togetter.com

しかしながら、実際に1970年代から1980年代にかけて、数多く登場した少女マンガにそういうシーンがそれほどある訳ではないという。竹熊氏は「サルまん」を出版した後、「りぼん」を全巻持っているという人から創刊号から全部調べたがそのようなシーンは発見できなかったと言われたらしい。
へー。
しかしその後、70年代の「ガラスの仮面」に使用例が発見され、竹熊氏もこれを読んでいた可能性がある、と思ったという。
あ、これは典型的な「遅刻する食パン少女」ですね。

70年代の「ガラスの仮面」に使用例が発見された。

出典:www.facebook.com

実際そんなに沢山はないけど、あるにはあるってとこか。
最近だと、あえてそういうシーンを使うマンガもありそうですね。

「ホールドアップ」(武論尊/弓月光)にも。少女マーガレット、1981年頃。

出典:togetter.com

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【原点】1番古い「遅刻する食パン少女」は…?

出典:www.facebook.com

今のところ1番古いのは1961年の「サザエさん」なんだって。
ほー。ワカメちゃん?
その他、1960年代から、ちばてつや作「ハリスの旋風」など少年マンガもいくつかそういうシーンが発掘されている。
別に少女マンガだけじゃなかったんですね。

ちばてつや作「ハリスの旋風」週刊少年マガジン1965年12月19日号より

出典:togetter.com

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【定番化】本当に流行ったのは「新世紀エヴァンゲリオン」(1995年)でネタにされてから

出典:www.facebook.com

「遅刻する食パン少女」という概念は、1990年代「サルまん」で指摘され、その後アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」(1995年)で使われて、広く浸透したと言う。
これはエヴァンゲリオンのテレビ版最終回ですね。
そう最終回、あの綾波レイの有名なカットだよ。
並行宇宙にいるエヴァンゲリオンのキャラクターたち、その中で綾波レイさんが「遅刻する食パン少女」になる可能性もあった、という最終回でした。

「いらすとや」のフリー素材にも登場する「遅刻する食パン少女」

出典:www.irasutoya.com

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【キレンジャーの錯誤】原典なしにパロディだけが流通する

出典:web.archive.org

■キレンジャーの錯誤について-原典なしにパロディだけが流通する
 「遅刻しそうな女の子が食パンを咥え、走って登校している途中で曲がり角で男の子とぶつかり…… 」というパターンが「少女マンガの定番」とされることが往々にしてあるが、1970~1985の『りぼん』作品を全て読破した経験から言えば、そんなマンガは存在しない。定番ではない。また「眼鏡を取ると美形」も少女マンガの定番と一般に思われているようだが、これも事実と反する。(「眼鏡を外して美人」というパターンについての世間の誤解はここを参照)。しかし、事実無根にもかかわらずなぜ「定番」だと勘違いされるのか。
 示唆となるのが「キレンジャーの錯誤」という概念だ。戦隊もので黄色というとデブでカレーが好きというパターンが定番だという観念が広く共有されていたが、実はカレーが好きでデブな黄色が出てくる戦隊ものはたった一つしかない。「目立った一例が、そのカテゴリー全体の共通項のように扱われる事」、これが「キレンジャーの錯誤」という現象だ(詳しくはここの考察を参照)。そして誰もが原点を挙げることすらできないのに、パロディーだけが流通するという事態が現出する。

出典:web.archive.org

今はもうネット上から消えているが、アーカイブとして残っているブログに、「原典なしにパロディだけが流通する」という考察があって興味深かったので、最後に引用する。
「遅刻する食パン少女」の他にも、「眼鏡を外して美人」、「キレンジャーの錯誤」という概念が…あるんですね。
あるある。ま、こういう概念の定着は、それだけ日本のマンガや特撮などのサブカルチャーが、広く日本人の生活の中に溶け込んでいった証左でもある。太ってる奴はカレーが好きと思われ、メガネをとったら美人ね、ハンサムねと思いがち。1980年代の松田聖子の歌にもそういう歌詞があったな。

※松田聖子「ハートをロック」(1983年:作詞/松本隆)です

調べるとまだまだありそうですね。
そのうちだれかが、日本のアニメ・マンガにおける定番表現という文献をまとめてくれないかな?
そーいうのは、すでにあるんじゃないですか?

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【追記(2022年1月28日)】竹熊氏の見解を追記

食パン少女の発生は、全ての漫画・ドラマ・映画などを検証しないと断定できないが、推測するに、日本が高度成長期(1955〜1973)に入り、テレビが始まり、アメリカのホームドラマに朝食にトーストを焼いて食べる描写があり、おそらくその影響で日本でもパン食が普及した以降のことだと思う。
ワカメが食パン少女をやる1961年の「サザエさん」は、まさに高度経済成長期の作品であり、朝にトーストを食べる習慣が起き始めた時期に一致する。56年から61年までの漫画・映画・ドラマを検証すれば、食パン少女のルーツが見つかるかもしれない。もちろんサザエさんが最初の可能性もある。
この問題を検証した例としては、ほうとうひろし氏のTwitterまとめが詳しいが、このなかに1972年の外国映画に食パンを食べながら投稿する女子学生の例が紹介されているので、案外、「食パン咥えて遅刻遅刻」は海外映画やドラマが本当のルーツの可能性は高い。

出典:www.facebook.com

バイキングにコメント提供したことがきっかけで、「遅刻する食パン少女」のルーツについてあれこれ考察しているが、もしかすると極めてルーツに近いのではないかという例を見つけた。米国コロンビアが1940年に公開した「Mad Hatter」というアニメで、冒頭、会社に遅刻しそうになった若いOLが全速力で身支度をして会社に出勤。

途中に朝食を猛然と掻き込むシーンがあり、パンを咥える描写はないが、ここから「食パン少女」に発展したとしてもおかしくはない。「アイ・ラブ・ルーシー」よりさらに古く、ルーツは戦前アメリカのコメディ映画やアニメの可能性が出てきた。

しかしこの「Mad Hatter」、完全に気が狂ったアニメだな。
A 1940 Color Rhapsody cartoon, directed by Sid Marcus. Simply too weird not to post.

出典:www.facebook.com

もともと数日前の竹熊氏によるFacebook投稿をきっかけにいろいろと調べてみたわけだが、その竹熊氏の見解を追記。
ふむふむ。

Mad Hatter [Columbia/Screen Gems, 1940]

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